新たな国民病 慢性腎臓病(CKD)を知ろう

新たな国民病 慢性腎臓病(CKD)を知ろう
慢性腎臓病

ある病気になったとき、その疑いがあるといわれたとき、今後自分はどうなるのか気になりますよね?
さまざまな病気について、なおし方やつきあい方を医師がやさしく解説するびょうき 学びの部屋シリーズがスタート!

第1回目は「新たな国民病 慢性腎臓病(CKD)を知ろう」というテーマでお届けします。


慢性腎臓病とは?

腎臓をとりまく内臓の名称

腎臓は、腰の上部に左右2つあり、そらまめのような形をした、握りこぶしくらいの大きさです。毎日150ℓもの血液をろ過して、老廃物や余分な水分を尿として体外に排泄しています。
 また、体液の量や浸透圧・血圧を調整したり、ナトリウム・カリウムなどのミネラルや酸・アルカリのバランスを保ったりしています。
  さらに、血液を作るホルモンを分泌する、骨を強くする、といった働きがあります。

この腎臓の働きが低下した状態を慢性腎臓病(CKD)といい、具体的には、腎機能が健康な人の60%以下もしくは腎臓の形や尿の異常(たんぱく尿など)が3か月以上続くと、CKDと診断されます。

日本ではCKD患者が約1,330万人(成人の8人に1人、80歳代は2人に1人。2011年時点)いるとされ、“新たな国民病”といわれています。

初期のCKDではほとんど自覚症状がありませんが、進行すると、むくみ、貧血、倦怠感、息切れ、夜間尿などがみられ、やがて腎不全や尿毒症、骨粗しょう症などになる恐れがあります。悪化するにつれて心臓や血管の負担が増え、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも高まります。

まずは腎臓の状態を知ろう

腎臓の働きを知る指標の一つが、血清クレアチニン値から推定した推算GFR(eGFR)です。健康診断の項目で見たことがある方も多いのではないでしょうか。

クレアチニンは血液中の老廃物のひとつ。通常は腎臓でろ過され、ほとんどが尿中に排出されますが、腎機能が低下すると、血液中に蓄積されて値が高くなります。
 血液中のクレアチニンの検査値(血清クレアチニン値)を元に算出できるeGFRは、腎臓がどれくらい血液をろ過して尿を作れるかを示しています。例えばeGFRが50なら、腎臓の働きは健康な人の50%にまで低下していると考えてよいでしょう。

慢性腎臓病の病期ステージ表

CKDの場合、病期の進行は一方通行で、失われた腎機能は回復しません。原因や進行度(ステージ)に応じて治療目標を定め、それ以上悪くならないように管理していくことになります。
 さあ、まずはあなたの腎臓の働きをチェックしてみましょう!

こんな人は要注意!

肥満運動不足飲酒喫煙ストレスなどの生活習慣は発症に大きく関わるとされ、いわゆるメタボの方は発症率が高いことが分かっています。
 また、eGFRが問題ない値(90以上)でも、糖尿病高血圧脂質異常症喫煙習慣などの危険因子を持っている人は要注意。とくに糖尿病の方はCKDになりやすいです。

初期症状がほとんどないため、むくみや貧血に気づいたときには、かなり悪化していることが多くみられます。
 予防と早期発見のためには、血圧管理と検査が大事生活習慣を見直して、まずは減塩と禁煙。日頃から血圧を測り、定期的に健康診断で血液検査・尿検査を受けましょう。

CKDと診断されたら…

● 治療のはじまり

治療が必要になると、まず食事などの生活習慣の改善や薬物療法を始めます。
 食事の面では、カロリーをコントロールして適度なエネルギーを摂取しつつ、タンパク質や塩分などの摂取は控え、適切な水分量をとるようにします。
 薬物療法は、腎機能を補う薬を飲むことで、病状の進行を遅らせたり、腎機能の低下に伴う症状を改善したりします。

腎代替療法選択肢

さらに腎機能が大きく低下すると、自身の腎臓に代わって老廃物や余分な水分を取り除くための代替治療(透析や腎臓移植)を受けなければなりません。eGFRがおおむね10以下になると、透析や移植の準備を進めます。
 透析には血液透析と腹膜透析の2つがあり、個人の生活動作レベルやライフスタイルに合わせて選択します。

● 血液透析とは

血液透析とは、血液を体外に送り出し、透析器のフィルターを介して老廃物や余分な塩分・水分を取り除いた後、きれいになった血液を体内に戻す方法です。

多くの血液を透析器へ送り込めるよう、まず、手首近くの血管を太くする手術(シャント作製術など)を受け、その後、血液透析がスタートします。
  1回の透析に4~5時間を要し、それを週3回通院して行います。血液透析を選択する方が大半ですが、通院の大変さは言うまでもありません。

血液透析のイメージ図
血液透析の写真
血液透析を受けている様子

● 腹膜透析とは

腹膜透析とは、お腹の中の空間(腹腔)に透析液を注入し、臓器を包んでいる「腹膜」を介して老廃物や余分な塩分・水分を取り除く方法です。

まず、透析液を体内に注入したり排出したりする細い管を腹部に埋め込む手術(カテーテル挿入術)を受けます。
 透析は自宅などでできるため(在宅透析)、腹膜透析がスタートすると通院は月1~2回です。
 1日に3~5回各30分ほど透析を行う方法と、1日1回夜寝ている間に行う方法があります。食事後のすき間時間や睡眠時間を活用して、働きながら透析をする方がたくさんいます。

腹膜透析イメージ図
腹膜透析の写真
お腹につないだカテーテル

ただし、透析液のバッグ交換などの手技を自身で行わねばなりません。腹膜炎などの感染症に注意が必要ですし、5~10年で血液透析に移行するという難点もあります。
 それでも、自力で尿を出して残された腎機能を少しでも長く活かすことになるため、長期的にみて良いとされています。

● 長くつきあっていくために

拘束時間などに差はありますが、どの透析手法でも、食事や水分の制限、薬の服用は続き、旅行や出張のときは透析できる施設や装置を準備しなければなりません。感染症や合併症への注意も必要です。
 一方、腎臓移植は容易ではなく、国内では年間2,000例にも及びません。
 まずは腎臓がなるべく悪くならないように、透析が必要になったらなるべくうまくつきあえるように、早めに医療機関を受診し、スタッフの指導やサポートを受けましょう。

当院のCKD治療の特徴

当院には、学会認定の透析専門医や透析看護認定看護師のほか、薬剤師や栄養士らを含む多職種のスタッフが連携して、CKDの方をサポートしています。専門医は複数在籍しており、透析導入前の手術を行うほか、より効率良くかつ体への負担が少ない透析を安心して受けてもらえるよう管理しています。

当院は急性期医療を担う総合病院であるため、体調の急変にも迅速に対応でき、複合疾患のある方には他科と連携して対応します。

一般向けに、腎臓の働きと病気について理解を深めてもらう講座「腎臓病教室」を開催しています。(コロナ禍において休止中)

また、CKD外来を開設して、初期の患者さまには食事など生活指導を行い、適切な薬を処方しています。
 代替治療が必要になったら、家族と相談しながら本人が納得して治療法を選択できるよう、丁寧にメリットやデメリットを説明するなど、導入までの道すじに関わっています。
 さらに腹膜透析の方には、事前にデモ機を使って手技指導をするのに加え、退院後には自宅に伺い、問題なくできているかフォローします。
 

血液浄化・透析センターは、きれいで快適な設備を整え、専任スタッフが長きにわたる透析生活に寄り添います。
 患者さまがより良い体調で暮らせるよう、水分管理、食事指導、シャント管理、フットケアなどの指導に注力。
 また、厳重な透析液管理のもと、オンラインHDFという、血液中から除去できる物質がより多く合併症になりにくい手法にも対応しています。

血液浄化透析センター内部

記事監修: 医師 志水英明

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