ブルブルッ!寒いだけじゃすまない
ヒートショック
- 2021.01.26
- けんこうの塩梅
冬真っ只中、寒い日々が続いています。 「ヒートショック」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 聞いたことがある方でもその対策まで知っている、という人は意外に少ないかもしれません。そこで今回は冬に気を付けていただきたい「ヒートショック」についてのお話です。
ヒートショックって何? どうして起きるの?
ヒートショックは温度差の影響を受けて、血圧が大きく上下することによって脳や心臓への激しい負担が起きた状態です。 暖かいところから寒い場所へ移動するとブルッと震える経験はだれにもあると思います。そのブルッと震えるときにはある変化が体の中で起きています。
簡単にいうと、熱を奪われないように血管が縮み血圧が上がります。 その後、暖かい環境に移った場合には、逆に血管は拡がり血圧が低下します。 このように血圧が極端に上がったり下がったりすることで身体に大きな負担がかかるために起こる健康障害がヒートショックです。 ヒートショックは冬だけに起こるわけではありませんが、室内外の温度差が大きくなりやすい環境にあることから、圧倒的に冬に多いのです。そしてこの状況の代表的な例がお風呂です。 ヒートショックの症状は、血圧が激しく変動することに伴うことに関係しているので、めまいや立ちくらみのようなわりと軽めの症状から、胸が痛い(狭心症や心筋梗塞)、意識が低下する、手足の動きが悪くなったりしゃべりにくくなったりする(脳卒中)など、命に関わる症状までさまざまです。
特定の症状が出たら「ヒートショック」だということではなく、背景に急激な温度差にさらされたことに加えて、上記のような良くない症状が現れたときに「ヒートショック」だと判断することになります。
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寒さで血管が縮まり血圧が上がる
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お風呂場に移動したときに、浴室全体が温められていない環境だとかなり温度は低いので、さらに血圧が上がる可能性がある
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お風呂に入って5分もすると、温められて血管は拡がり血圧が低下する。
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浴槽から出ようと一気に立ち上がると、血圧が低下する。
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立ちくらみのような症状や瞬間的な意識の喪失が起こることもある。
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転倒事故発生の可能性あり。最悪の場合には浴槽内で溺れることもある。 心臓や頭などの血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中に繋がることもある。
お風呂以外にヒートショックが発生しやすい要注意場所としては、脱衣所やトイレが挙げられます。これらは基本的に室温が低いことが共通しています。常に過ごすために暖めているリビングのような環境とは異なり、ひつようなときだけ使用する場所だからですね。
ヒートショック対策をしましょう
基本的には血圧が激しく上がったり下がったりするのを防ぐことがとても大切です。
お風呂・脱衣所
●タイミング
- 食後すぐはNG:食べると血液の流れが胃や腸に多くなるため血圧が低くなりがちです。入浴は食後1時間以上あけてからにしましょう。
- 気温の低い時間帯は避けて:早朝や深夜は気温が低いので温度差が大きく、身体に負担がかかりやすいので避けましょう。
- 浴室があったまってから:一番風呂は気分の良いものかもしれませんが、高齢の方や持病のある方は、浴室も温まっている二番風呂以降のほうが安全です。
●準備
- 浴室を温める:湯船にお湯を張るときは、お風呂の蓋を開けたままにしておいたり、またはシャワーを使ってお湯を張ったりすると、浴室全体が蒸気で温まります。最近は浴室暖房のついたお風呂も増えてきました。もしご自宅のお風呂場についていればぜひ活用してください。
- 床も冷たくないように:床がタイルなどで冷たい場合は、すのこ(簀の子)やマットなどを使用するのも良いでしょう。
- 温度は40~41度程度が理想的:熱すぎるお湯は、瞬間的な血管収縮(縮み)のために血圧が急に上がる原因になりますので気を付けましょう。
- 水分補給:入浴によって発汗が促されるため、脱水を予防するために入浴の前後でコップ1杯程度の水または白湯を飲みましょう。(水分制限の指示を受けている方は主治医に相談してください)
- 一声かけて:一緒に住んでいる人がいれば、「今からお風呂入るね」と声をかけておきましょう。おうちの方は普段よりも長い風呂だなと感じたら、様子を見に行くようにしましょう。
●いざ、お風呂へ!
- 脱衣所も温めて:脱衣所で服を脱ぐとき、急に裸になって温度変化を受けやすいので、暖かくしておくようにしましょう。
- いきなり入らない:いきなりお湯につかるのは危険です。まずは手足身体の順にかけ湯をしましょう。
- のんびり浸かる:時間の目安は一般的には10分程度と言われています。湯船に入ってしばらくするとリラックスして血管も拡張(拡がる)してきます。
- ゆっくり出る:浴槽から出るとき、一気に立ち上がるのはやめましょう。普通の状態でも一気に立ち上がるときには立ちくらみが起きやすいですね。入浴で血管が少し拡がった状態のときには、その症状がより強く出やすくなります。
トイレ
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- トイレを温かく:温度差をなくし暖かくしましょう。便座を温められる機能がある場合には積極的に使用しましょう。
- いきみは禁物:いきみは血圧を上げることに繋がります。寒いトイレで排便のためにいきむのは絶対にお勧めできません。便秘の方は特に気を付けましょう。
- 夜間は特に注意:夜間トイレに行く時、パジャマのまま起きて裸足で行ったりしていませんか? 袢纏やカーディガンなどを羽織り、スリッパなどを履いて身体や足元が冷えないようにしてトイレに行けるように準備をしてから寝るようにしましょう。
もしもの時はすぐ病院へ
ヒートショックは案外予防対策の可能なものだとおわかりいただけましたでしょうか? 急激な温度差の環境にさらされてしまった後に、めまいや立ちくらみ、胸(心臓)の痛み、手足の動きの悪さなど、これは危険?!と感じたら、躊躇せず、受診しましょう。先にもお話したように、ヒートショックでは、命の危険に及ぶこともめずらしくはありません。
受診の際に気を付けておきたいこと
急に体調が悪くなり受診することになったときに困らないよう、普段から次のこと準備しておきましょう。
- これまでの病気や入院について普段から簡単にまとめたものを準備しておきましょう。緊急時にはド忘れしてしまうこともありますし、話をするのもしんどい状態になっていることもあります。書き出しておくことをお勧めします。
- 受診される方の服薬内容がわかる「おくすり手帳」(ない場合はお薬そのもの)をお持ちください。例えば、「高血圧と言われたことはないです」と言われる方の中に「血圧を下げる薬」を内服していらっしゃる方はときどきいらっしゃいます。普段飲んでいるお薬によって、そのときに新しく処方するお薬との飲み合わせなどを調整する必要も出てくるからです。
まだまだ寒い日が続きます。体に負担をかけないよう、温かくしてお過ごしください。
●この記事を書いた人
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