その首や腰の痛みは 椎間板ヘルニアかも?

その首や腰の痛みは 椎間板ヘルニアかも?
学びの部屋 椎間板ヘルニアアイキャッチ画像

ある病気になったとき、その疑いがあるといわれたとき、今後自分はどうなるのか気になりますよね?
さまざまな病気について、なおし方やつきあい方を医師がやさしく解説するびょうき 学びの部屋シリーズ。

第4回は「その首や腰の痛みは 椎間板ヘルニアかも?」というテーマでお届けします。


  

首や腰のトラブルいろいろ

首や腰の痛みは日常生活でもありふれた症状で、これらの痛みを伴う病気はたくさんあります。
 体重の1割を占めるほど重い頭を支えている首。首が痛む場合、単に頚部(首)のこりによる筋肉痛のほか、姿勢の悪さが原因で本来はカーブしている首の骨が直線的になる「ストレートネック(スマホ首)」などが最近は多いでしょうか。
 身体を支えるかなめとなる腰。腰が痛む場合、よく知られる「ぎっくり腰(急性腰痛症)」のほか、骨粗しょう症や神経痛のたぐい、内臓の病気、がんの骨転移など、枚挙にいとまがありません。
 今回取り上げる「椎間板ヘルニア」は、⾸や腰に痛みをもたらす背⾻
(脊椎、せきつい)トラブルの代表格です。 

椎間板ヘルニアとは?

背骨は、多くの骨(その一つひとつを「椎骨」といいます)をお尻から首まで積み上げた構造であり、椎骨どうしの間には、椎骨をつないでクッションの役割をする「椎間板」があります。

椎間板の中には髄核というゼリー状の組織があり、髄核が飛び出して脊椎の隣を走っている太い神経(脊髄)を圧迫することを「椎間板ヘルニア」といいます。「ヘルニア」の意味は、組織や器官などが本来あるべき位置から逸脱すること。軽い圧迫であれば、無自覚のまま自然に治ることがありますが、髄核が激しく飛び出ると症状が現れます。

脊椎の構造と名称
椎間板ヘルニア

これが首で起こると「頚椎椎間板ヘルニア」と呼ばれ、典型的な症状として、首の後ろや肩、腕に痛み・しびれを感じます。進行すると、まひのように手足の動きが悪くなります。

腰なら「腰椎椎間板ヘルニア」と呼ばれ、腰やお尻、足に痛み・しびれを感じることになります。進行すると、足に力が入りにくくなり、感覚障害や筋力低下、尿漏れなどの排尿トラブルに発展することもあります。

首や腰の痛みの原因はさまざまであるため、診断にはまず、下肢伸展挙上試験(膝を伸ばしたまま足をあげて痛み具合をみる)や、足の感覚が鈍いかどうか、足の力が弱まっていないかなどを調べます。さらに、X線検査、MRI検査などを行い、診断を確定します。
 

こんな人は要注意!

椎間板ヘルニアの原因として、遺伝加齢もありますが、椎間板に大きな負荷がかかることが影響します。姿勢が悪い人(反り腰や猫背など)、重量物を持ち上げる動作や激しいスポーツをしている人、肥満の人などは注意が必要です。
 また、喫煙によっても発症しやすくなると言われています。

予防のためには、姿勢を良くし、重量物を扱う作業などを避けること、避けられない場合は身体にかかる負担を減らす動き方をするように努めることが重要です。肥満の人は適正体重を目指しましょう。ストレッチや適度な運動で筋力アップを図るのもよいでしょう。
 

椎間板ヘルニアの治療

● 治療の始まり

まずは安静第一。それから、

  • 固定

身体を支えて脊椎への負荷を減らすため、コルセットなどを使って固定します。

痛みを和らげるため、鎮痛剤を飲んだり、神経ブロック(神経の周りに痛みや炎症を抑える薬を注射する)を行ったりします。

  • 運動

脊椎への負荷を減らすため、痛みが軽くなれば運動を始めて身体を支える筋力をつけます。肥満対策の意味もあります。

それでも改善しない場合や進行して症状がひどい場合には、手術が検討されます。適切な時期を逃すと手術が成功してもしびれなどの後遺症が残ることがあるため、医師とよく相談しながら症状の進行に注意することが必要です。

● 手術で行われること

手術の狙いは、髄核の飛び出し部分に手を加えて神経を圧迫しないようにすること。首や腰の後ろ側を切開し、内視鏡などを使ってピンポイントで切り取ったり、薬を使って飛び出しを小さくしたりします。

当院で主に採用している内視鏡を使った方法では、7mmほど切って極細の内視鏡を挿入し、髄核を切り取ります。これは、経皮内視鏡的椎間板摘出術(PED)という術式で、より傷が小さく筋肉の損傷がほとんどないことから、術後の痛みが少ないうえに、早期に社会復帰できます。局所麻酔下で日帰りでも可能ですが、患者さんの術中の苦痛を和らげるため、当院では全身麻酔下にて行っています。

PEDは行える医師が限られるため、一般的には、メスで3cmほど切って顕微鏡で確認しながら髄核を切り取る手法が行われます。しかしPEDと比較して筋肉がダメージを受けることになり、入院期間もより長くなります。

また、ヘルニコアという手術もあります。これは、髄核の成分を分解するコンドリアーゼという薬剤を髄核に直接注射し、髄核内の水分を減少させて飛び出しを抑え、神経への圧迫を和らげる治療法です。

全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(FED)
ヘルニコア

 
 さらに、頚椎では、人工の椎間板に置き換える手術人工椎間板置換術)を行うこともあります。これはチタンなどの金属混合物とセラミック素材で作られた人工の椎間板を、変性した椎間板を取り除いた後に挿入することで、神経の圧迫をなくし、椎間板本来の動きを取り戻すことをめざす手術です。

人工椎間板

● 治療後の再発予防

手術をせずに痛みが和らいだ方も、手術をして痛みのもとがなくなった方も、運動療法が大切です。原因箇所以外でも再び椎間板が飛び出しかねません。医師の指示のもと、脊椎への負担が少ない日常動作ができるように、そして体幹や背筋の筋力をつけて脊椎への負荷を軽くできるように、リハビリテーションを行います。
 

当院の椎間板ヘルニア治療の特徴

当院は「脊椎外来」を設けて、首や腰の痛みに悩む患者さんに幅広く対応するための門戸を開いています。加えて、「脳外科脊椎センター」を設けており、脊椎疾患に関する経験豊富な医師陣が、高度で専門的な医療を提供する体制を整えています。

その治療の最大の特徴は、症状に合わせてさまざまな手術に対応できることです。筋肉へのダメージが少ない全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術(FED)という術式にも対応でき、患者さんにとって入院期間が短く早く社会復帰できるというメリットがあることから、できる限りPEDを採用しています。
 治療法を選択するときには、患者さんの体への負担が少なく、日常生活を支障なく過ごせることを重要視しています。ときには、大がかりな手術で曲がった背骨をピンと真っすぐにしなくても、障害されている神経をピンポイントで修復するような、“体にやさしいリフォーム程度の手術”がよいケースもあるもの。知識・技術・経験を駆使して、患者さん視点の治療が提供できるような選択肢を用意しており、ご年齢やライフスタイル、患者さんのご希望などを考慮しながら治療法を選択しています。

また、設備の充実にも注力しており、高性能な内視鏡や顕微鏡を導入したり、術中の神経モニタリング装置や位置を精密に確認できるナビゲーションシステムを併用したりして、手術の安全性向上を図っています。

リハビリテーションは術後早期に開始。患部の状況に合わせるのはもちろん、メンタル面にも寄り添いながら、患者さん個々の生活に応じた運動と自主訓練の指導を行っています。
 

記事監修: 医師 中島康博

脳外科脊椎センター、だいどうクリニック脊椎外来のご予約案内