ピロリ菌を撃退せよ! 胃炎・胃潰瘍
ある病気になったとき、その疑いがあるといわれたとき、今後自分はどうなるのか気になりますよね?
さまざまな病気について、なおし方やつきあい方を医師がやさしく解説する「びょうき 学びの部屋」シリーズ。
第6回は「ピロリ菌を撃退せよ! 胃炎・胃潰瘍」というテーマでお届けします。
胃炎とは? 胃潰瘍(かいよう)とは?
● 胃の働きと構造
消化の第一段階を担う胃。食物が入ってくると、酸性度の強い胃酸や消化酵素を含む胃液を分泌し、胃が伸び縮みして食物と胃液をかき混ぜ、消化します。食物とともに入ってきた細菌などを胃液で殺菌する役割もあり、分泌される胃液は一日に1.5~2.5Lにもなります。
胃の壁は、最も内側の粘膜をはじめ組織が層状に重なってできています。粘膜は、胃液を分泌する一方、強酸性の胃酸から自らを守るための粘液も分泌しており、両者のバランスはうまく保たれています。このバランスが崩れて粘膜が傷つくことがあり、自然に治ることもありますが、傷が長引くとさまざまな病気になります。ここでは、よくみられる「胃炎」と「胃潰瘍」について説明しましょう。
● 胃炎と胃潰瘍の違い、主な症状
胃炎と胃潰瘍、どちらも胃の内壁の傷による病気です。
胃炎はさらに、急性胃炎と慢性胃炎に分けられます。
急性胃炎は、粘膜に炎症が起きて赤くなったりただれたりした状態です。主な症状として、胃(みぞおち付近)のキリキリとした痛みや胃もたれ、嘔吐などがみられ、胃から出血していると黒い便が出ることもあります。
慢性胃炎は、胃液を分泌する細胞が減って粘膜が薄くなった「萎縮性胃炎」を指します。胃の粘膜に生息する「ヘリコバクター・ピロリ菌」が主犯格と目されており(詳細は後ほど)、自覚症状が出にくいため、健康診断などで偶然みつかることが多くあります。
胃潰瘍は、胃炎よりも傷がひどく、粘膜の下の組織まで深くえぐられ傷ついた状態をいいます。主な症状は、胃の痛みのほか、吐き気や嘔吐、むかつき、胸やけ、消化不良、背中の痛みなどで、ときには黒い便が出たり吐血したりすることもあります。一方で、ほとんど自覚症状がないこともあります。
ちなみに、傷が粘膜内にとどまっている状態を「びらん」と呼びます。
たかが胃痛と思って放っておいた結果、胃に穴があいて緊急手術が必要になった、実は胃がんなどの別の病気が隠れていたのに手遅れになった、というケースも・・・。
気になる症状があれば受診し、症状がなくとも健康診断を定期的に受けて、問題を指摘されたら治療について医師と相談しましょう。
原因はピロリ菌?
なぜ胃の内壁が傷つくのでしょうか?
一般的には、ストレス、食べ過ぎ・飲みすぎ、唐辛子などの刺激物の過剰摂取が原因と思われがちですが、それだけではありません。アスピリンやロキソプロフェンを含む解熱鎮痛薬(NSAIDs)は、粘液の分泌を抑える作用があり、胃液と粘液のバランスが崩れて胃潰瘍になることがあります。市販の痛み止めにも含まれるものがあるため、注意して使いましょう。
とりわけ、ピロリ菌が出す毒素が粘膜を傷つけることがわかっており、慢性的な炎症によって萎縮性胃炎を起こします。胃潰瘍も、原因の多くがピロリ菌とされています。さらに、感染すると十二指腸潰瘍や胃がんになるリスクが高まりますし、貧血や血小板が減る病気などにも関与しているとみられています。
ピロリ菌は、アンモニアを作り出して強酸性の胃酸を中和することができ、除菌しない限り胃の中にすみ続けます。幼い頃に衛生環境が良くなかった世代で感染率が高く、日本人の高齢者層の多くが感染しているといわれます。唾液を介して幼い子に感染することがあるため、気を付けましょう。
検査と治療、そしてその後
● 内視鏡と薬がカナメ!
胃炎や胃潰瘍の疑いがある場合、たいていは胃の内視鏡検査(胃カメラ)を受けます。バリウムを飲んで行うX線検査(レントゲン)でも胃壁の様子がわかりますが、内視鏡の方がより直接的に病状を確認できます。
出血がみられれば、内視鏡検査のときに止血します。検査と同時に止血治療ができるのは、口からの内視鏡の大きなメリットの一つです。
ピロリ菌の感染の有無は、血液検査や尿検査、内視鏡検査、吐く息を集めて調べる呼気試験などを行って調べます。
胃炎・胃潰瘍の治療はとにかく薬。食事などの生活習慣を改善しつつ、制酸剤や胃粘膜保護剤を服用し、胃壁の傷が治るのを促します。
ピロリ菌が原因の場合は、薬で一旦傷が治っても再発を繰り返すため、除菌することが重要です。除菌治療は、抗菌薬など数種類の薬を1週間飲むだけ。その間は禁煙・禁酒が必要ですが、保険も適用されます(二回目まで)。1~2か月後に除菌できたかの判定検査を行い、9割の方はこれで除菌に成功しています。除菌できていなければ、二回目の除菌治療を行います。
● 治療後の暮らし
除菌できればすべてが安心というわけではありません。ピロリ菌の感染期間が長ければ、胃の粘膜の状態が改善するのに時間がかかりますし、生活習慣次第では、粘膜はいつでも荒れるもの。
また、除菌判定検査は100%完璧ではないため、実は除菌しきれなかった方でピロリ菌が再燃することもあります。
除菌後も胃がんのリスクはあるため、定期的に内視鏡などによる検査を受けて、いつまでも健やかな胃を保てるようにしましょう。
当院の胃炎・胃潰瘍の検査・治療の特徴
当法人には学会認定の消化器病専門医・内視鏡専門医が多数在籍し、そばで補佐する看護師の多くが内視鏡技師資格を保有。十分な知識・技術・経験を持ったスタッフが、安全・安心な検査・治療を24時間365日提供できるよう努めています。年間検査数は14,000件を超え、東海地区有数の豊富な内視鏡検査・治療実績を誇る施設であると自負しています。
内視鏡検査に苦痛のイメージを持つ方も多いと思います。しかし、そのイメージや患者さんの不安を払拭したい思いで、のどのつらさが少ない「経鼻内視鏡」も備え、ときには苦痛を減らすための鎮静剤(ウトウトした状態になる薬)や鎮痛剤(痛みを和らげる薬)を使用し、患者さんにやさしい検査・治療に努めています。
大同病院内にある内視鏡センターは、きれいで広々とした待合、高画質・高性能な機器など、整った環境の中で検査・治療を受けることができます。鎮静剤使用後に休むためのリカバリールームとケアするスタッフが充実しているため、ご希望があれば鎮静剤の使用に十分対応できます。また、土曜日にも検査をしているので、平日に時間が取れない方もぜひお越しください。
大同みどりクリニック(名古屋市緑区)では、朝は8時から、夕方は19時まで内視鏡検査ができますので、お仕事が忙しい方など一度ご相談ください。
中央クリニック(東海市)では、口からの内視鏡にも劣らない高画質な経鼻内視鏡を導入しました。
人間ドック、名古屋市ワンコイン検診といった各自治体のがん検診から健康保険の健診まで、さまざまな健康診断に対応していますのでご利用ください。
記事監修: 医師 西川貴広
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